41.きっかけの話「かき氷」
この夏、国立にある
本とまちのコミュニティスペース「国立本店」で行われた夏のイベント「くにたち夏のほんまつり」に参加しました。
僕が声をかけてもらったのは、以下の企画。
●「おいしく、とける」1冊選書
くにたち・本・ものづくりに関わる方々を中心に、
国立本店の緩やかなネットワークでつながる方たちに
「おいしくとける」1冊を選書していただきました。
疑問がとける、価値観が混ざり合う、境界線が引きなおされる…
いろいろな意味を含んだこのテーマに
選書者はどのように向き合ったのでしょうか。
集まった本は58冊。選書者の活動と選んだ想いを
コメントシートともに展示します。
特にひねらず、テーマのまま本を選びました。
その時、書いた文章は僕がかき氷をはじめるきっかけになったこと。
ブログにも貼っておこうと思います。
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■タイトル:ひんやりと、甘味
■出版社:河出書房新社
■刊⾏年:2015
■選書者情報: 名前/藤田 一輝 肩書/かき氷 頂
「コメント」
ひんやりとした甘味にまつわるエッセイをまとめた本。
読んでいると自分にもひんやりと溶けていく甘味の記憶があることを思い出した。
僕がかき氷を始めたきっかけの話。
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7年前。国立市の駅からほんのすこしだけ歩いたお店に入った時のこと。
その日は、暑い日だった。日陰に入ってもじんわりと汗がにじむ。
普段は店主が作る匙の販売やセレクトした雑貨の販売を行なっている店だが、時折、つながりのある作家の展示やイベントを開催することもあるようだった。
その日は、イベントの日だった。かき氷屋さんが出店していた。
店内には熱気がこもっていた。
それほど広くはない店内で、老若男女集まった人たちが氷に夢中になっている。
シャクシャク、カラン。シャクシャク、シャクシャク、カラン。
昔ながらの手回しのかき氷機で削られる氷の音と、シロップの入った瓶にレードルを入れる音だけが店内に響いていた。
その時、僕が食べたかき氷は檸檬。ほろ苦いシロップ、口に入れるとフワッと溶けてしまう氷が体を冷やしていく。
かき氷を食べて一息つくと、店内に吹き込む風が涼しげに風鈴を鳴らしていた。